理事長あいさつ

Greetings

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手つかずの海から手塩にかけた海へ

産業革命以降の経済的合理性を目的とした沿岸地域の開発は、沿岸海洋生物の豊饒性を失う結果となりました。我われはその開発により豊かで快適な生活を享受する一方で、大切な湾岸海洋資源を著しく荒廃させてきました。その間にその有害性に気づいた我われは、ただ単に汚染物質の排出抑制しか行ってきませんでした。その結果、水質の改善が得られた反面、生物資源の回復には至らず、却って減少の一途を辿っています。

その原因としては、水域への酸素供給量の不足、栄養塩類の供給量の不足、赤潮などの原因細菌に対する競合細菌の絶対的な不足、繁殖産卵場の欠如などが考えられます。これらの原因に対して、ただ単に水域に生育する生物群に任せて改善を待つだけでは、生物資源の回復という成果は一向に得られません。

手付かずの海が何よりの自然保護への対策であるという考えでは、人の手で撹乱してしまった自然に対しては意味をなしません。撹乱し荒廃させてしまった沿岸海洋生物資源の復活に向けて、手付かずにすることなく、手塩にかけて回復のための対策を講じることが何よりも必要なのです。

そのために、私たちは最善かつ効果的な手法・計画の立案、実践へのビジョンを持つことが喫緊の課題であると考えます。

潮だまり財団は、研究支援を通じてアグレッシブな発想で豊饒な海を取り戻していくためのビジョンを明示します。

理事長川口 晋Kawaguchi Susumu